■ エンジニアへのQ&A


このページではマザーハウス レコーディング スタジオ
レコーディングエンジニアをしている
中川 直彦(なかがわ なおひこ)
Q&A方式でレコーディングに関してのお話を伺いました。

これからレコーディングをしようかなと思っている方や
自分達で宅録をしているアマチュアの方には
とても参考になる話だと思いますので是非ご覧になって下さい。


質問(以下Q)まずレコーディングエンジニアになられたきっかけは何ですか?またそのきっかけとなる作品かあれば教えてください。

中川(以下N)
この世界に入るまでに受けた音楽体験全てだと思います。別にエンジニアでなくてもよかった感じで、何か音楽を作り上げて 行くことに携われることができたらいいなあ、と漠然と思っていたところ、22歳の春、目の前にあったチャンスがエンジニアになれることでした。
音楽体験についていうと、父親がJAZZカントリーが好きで、幼少のころから休日の日にはかなりうるさいといった感じで家中流れていました。
中学生ぐらいまではクラッシックにはまり(ホールに響くストリングスの音は今でも弦を録る時の基準になっています。)その後ロックにもはまりますがこの時期の最大のショックは日野皓正のLIVEレニーホワイトチャックレイニ-のリズムセクションを見たことです。当時の鹿児島にはコンサートなどなかなか無い時代でしたが、日野皓正LIVEメンバーとして来日していたのです。その時の一曲目最初に出たレニーの物凄く強力な音とリズム、チャックのどこまでも柔らかくしなやかに弾むBASSは今でも頭の中にはっきりと残っています。
また大学の頃JAZZバーでバイトしていて、ジュニアマンスがソロで店でLIVEをやったのですが、握手してもらった大きな手と同様、そのあったかく心地のよいピアノの音は今も忘れられません。
4トラックのマルチカセットレコーダーが出たのもこの頃で、ローランドのリズムマシンやシンセを友達と持ち寄って自宅録音してました。ダンボールでドラムセットを作って録音したり、スネアのリバーブを作るのに風呂場で風呂桶をたたいてマイクで拾ったりしていました。

今思い返すとやはりきっかけは作品というよりもこうした体験にあると思います。

Qレコーディングエンジニア志望の人にお薦めの作品は何かありますか?

N
世の中に存在するすべての音がおすすめです。
その中で何をどういう風に拾い上げていくか、もしくは削除していくかが、もしかするとエンジニアの仕事の中のひとつかもしれません。
もちろん世の中にはいろんなタイプのエンジニアがいますが、私が今一番大事だと思うことは、やはりそのレコーディングの現場による実践での体験にあると思っています。色んな体験をしてみてください。
あとはもちろん作品を聴くこともお薦めです。もし聴くならいろんな体験をする事とは逆に一枚のレコードを全ての音符や音を覚えるまで聞き込むことをお薦めします、その行為の中できっと何かを見つけられると思います。
あとマイブームなのですが、今自宅にターンテーブルが4台あり、それぞれ調整を変えたり針を変えたりリード線を変えたりして楽しんでいますが、おもしろい事に日によって音が変わったりします。自分の耳の聞こえ方もあるのでしょうが、気温や湿度で楽器やマイクの音が変わるようにレコード針やレコード
の状態も変わるようです。それを少しずつ調整を変えたりしていく作業は日によって変わる音を追いかける録音作業と似ています。針とレコードの当たる角度の調整などマイクの当て方と割と共通した行為だと思います。
意外と耳のトレーニングになるかもしれません。

Qレコーディングエンジニア志望の人にお薦めのエンジニアはいますか?

N
お薦めと言うより私の好きなエンジニアになりますが、
・ルディー ヴァン ゲルダ-に代表される旧き良き時代のJAZZレーベルのエンジニア達
一瞬にして消え去る演奏された音や空気を余すところ無く捉えて2トラックに収めているのはすごいですね。
・ボブ クリアマウンテン
王道中の王道を貫いているように見えますが、そのなかで色々と面白いことをやっています。すごく大きな物語をPOPSの中に描ききる人だと思います。
・アル シュミット
10年ぐらい前にロスのキャピトルレコードのスタジオで会えることが出来ました。ストリングスのダビングの日でしたが、合間には「お前に一番弦がよく録れる方法を教えてやる」と腕を私の肩に回して、スタジオ中のマイクのいろいろなセッティングについて説明してくれました。ほんとにナイスなおじいちゃんでしたよ!スピーカーから出てくる音は正にあのAORサウンドそのものでした。
・スティーブ アルビニ
かなり独特な音を作る人ですが、この人の制作対象に対する思い入れ、特にインディーに対する考え方が大好きです。

あとはリミキサーとして、DJ SASHA

最近見たLIVEではDJプレイというより4時間延々と行われるリアルタイムインプロビゼーションリミックスといった感じで圧倒されました。元来持っているリズム感、音に対するセンス、その裏に見え隠れする凶暴な匂い。自己に陥らずそこにいる全ての人と一緒に作り上げていく姿勢。かなりハマってます。)

Q
今迄で印象に残っているレコーディングがあれば教えて下さい。

N
つい最近18年前に知り合い(レコーディングエンジニアとしての初仕事でした。)レコーディングしたメンバーと再びスタジオで作業する機会がありました。
プレイバックを聞きながらその当時から変わらない、相変わらずといった面や大きく変わったところなどを見つけてはみんなで大笑いでした。やはり経験というものは大事ですね。そういう意味で今までのすべてのレコーディングが体のどこかに残っています。
今行われているレコーディング、これからめぐり合うセッション全てが宝物です。

Q
始めてコンデンサーマイクを使うアマチュアの方にコンデンサーマイクの使い方で気を付ける事やコツとかあればお願いします。

Nコンデンサーマイクダイナミックマイクに関係なくマイクを自分の耳だと思ってください。自分の耳で聞いて良い音だと思うところにマイクを立てるのが最大のコツです。コンデンサーマイクは感度が良いのでくれぐれも取り扱いには気をつけてください
後は全て経験です。自分の持っているマイクの性格を自分の彼女彼氏カミサン子供の性格よりも熟知しましょう

Q:* マルチマイクドラム録りを行なう場合のコツなどあればお願いします。

N
これも上と同じです。それぞれのパーツを叩いてもらい、マイクを立てられる範囲でここがいい音だと思うところにマイクを立てます。ただし*位相には気をつけてください。位相がずれていても悪くは無いですが、思った感じにならないときにはチェックしてみてください。
でも本当に一番大事なのはドラムのチューニングとキットバランス、そしてプレイとその時のプレーヤーの気持ちだと思います。

* マルチマイク *位相 に関しては最後に詳しく解説します。

Q
アマチュアのバンドの方等が自分達で宅録するのとプロのエンジニアが行なうのとでは何か違いがあると思いますか?

N
おそらくあると思います。なぜなら宅録の場合、自分の創りたい方向へまっしぐらに進むことが多いと思います。しかしそこにエンジニアが入った場合、その時からそれは共同作業になります。エンジニアの考えも入っていきます。ソロでやるのかバンドでやるのかで出来上がる音楽が違っていくことと同じようなことが起きると思います。

Q:それでは最後に
これからマザーハウスでレコーディングを考えている方へのアドバイスをお願いします。

N
とにかくリラックスしてレコーディングができるように準備してきてください。焦っていて良いものが出来た事はほとんど無いですから。
リラックスした中で作品を聞いてくれるであろう人たちに対して、いいプレイができ、音が出せれば素晴らしいレコーディングになるでしょう。

もし機会があれば私にもお手伝いさせてください。一緒に楽しみましょう!!


う~ん 、これからレコーディングをしようかなと思っている方、自分達で宅録をしているアマチュアの皆さんいかがでしたか?
レコーディングに興味のある方にはとっても為になるお話でしたね!
これからレコーディングをお考えの方は是非一度スタジオ マザーハウスのレコーディングを体験してみてださい!

* マルチマイク *位相 に関して
通常Drの録音では「マルチマイク」と呼ばれる方法が現在では主流となっています。「マルチマイク」とは、Drのスネア、キック、タム、ハイハットなどをそれぞれ個別にマイクで音を拾い録音する方法です。
ここで何故Drの録音が難しいのか解説しておきますと、第一に位相の問題があります。位相とは1つの音を何本かのマイクが同時に拾った場合、その音が各マイクに届くまでの距離(時間)の違いで音の波形が各マイク間で揃っていたりずれていたりする状態の事を言います。
各マイク同志でその音の波形の山と谷が平行に合っている場合は正相、その逆で山と谷がぶつかり合っている場合は逆相となり、その音をお互いに消し合ってしまう状態になっています。そこでその場合、逆相正相に直してやらなければいけません。
この正相逆相を正確に聞き分け、それを短時間で直してやったりするのはプロのエンジニアでも時間と経験がなければ出来ません。
リハーサルスタジオを利用して自分達で録音をする場合、既に高価な機材等によって録音されているサンプリング音源によるシーケンスDrに重ねてギターや歌を録音をするのならばまだ良いのですが、上で解説した位相の問題もそうですが、同じ1つのスタジオ内でヘッドフォン等でモニタリングしながら、しかも大音量の生音を聞き分けて音のバランスを取って録音すると言うのはアマチュア(プロにとっても)にはかなり至難の技となります。

 


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